ふれあいペアレントプログラムとは

1)ふれあいペアレントプログラムとは何か

ふれあいペアレントプログラムとは、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: 以下、ASD)の幼児に社会的コミュニケーション発達を促す方法を、その親に教授する心理教育プログラムです。近年、DSM-5において社会的コミュニケーションの偏りや障害が診断基準に採用されるようになり、ASDの社会的コミュニケーションが注目されています。定型発達では、社会的コミュニケーションの基盤は乳児期後半にできますが、ASDでは2,3歳でもできない子どもがほとんどです。しかし、社会的コミュニケーションに問題や障害を持っていると、言語発達や社会性発達にも影響を与えることが指摘されており、ASD児が抱える社会的コミュニケーションの問題をそのままにしておくと、二次障害としてその他の発達を阻害することが考えられます。そこで、ASD児の社会的コミュニケーション発達を促すことは大変重要な課題です。しかも、定型発達では乳児期後半にクリアする課題については、なるべく早い時期に社会的コミュニケーション発達を促すことが必要です。 そこで、ふれあいペアレントプログラムでは、2歳前後~4歳未満のASDの子どもを対象に社会的コミュニケーション発達を促すことを目的にしています。題については、なるべく早い時期に社会的コミュニケーション発達を促すことが必要です。 そこで、ふれあいペアレントプログラムでは、2歳前後~4歳未満のASDの子どもを対象に社会的コミュニケーション発達を促すことを目的にしています。

2)ふれあいペアレントプログラム開発の経緯

「ふれあいペアレントプログラム」の開発にあたっては、開発者である尾崎による障害児教育と子育て支援に関する研究と実践が基になっています。子育て支援については、尾崎が14年間にわたって約2000組の一般の親子を対象にした子育て支援の実践を行い,その中で子育て支援プログラムを考案しました。また,約100組の発達障害の親子を対象にした子育て支援を行いながらペアレントプログラムを検討した成果をもとに,2013年に神奈川県大学発・制作提案制度助成金を得て,「社会的コミュニケーション発達を促すペアレントプログラム」を作成しました。そして,その後さらに内容を精査して,2018年に「ふれあいペアレントプログラム」を開発しました

3)ふれあいペアレントプログラムの概要

①目的

ASD幼児のお母さんやお父さんが,子どもの社会的コミュニケーション発達を促す子育ての方法を学ぶことが目的です。最終的には,お母さんやお父さんのQOLを向上させ,親のエンパワメントに繋がることを目指しています。

②方法

  •  対象は、ASD幼児(2~4歳)のお母さん・お父さん
  • 1グループ5名前後、指導者1名
  •  週1回のセッション、全9回(スケジュールは図表1を参照)
  • セッションの基本構成は、学習会、グループワーク、ふり返り、宿題
  •  学習会はテキストをもとに行う
図表1 ふれあいペアレントプログラムのスケジュール

③ターゲット・スキル

このプログラムのターゲット・スキルは、「人との相互的関わり」「共同注意」「感情や気持ちの共有」です。実際には、遊びを通してこれらのスキルを子どもが獲得できるようにしていきます。

図表2 ふれあいペアレントプログラムの3つのターゲット・スキル

④背景理論

現在、国内外で、発達障害に対する様々な親支援プログラムが提案されていますが、それらは、拠り所としている理論によって大きく3つに分けることができます(尾崎・三宅, 2016b)。すなわち,行動的アプローチ、発達論的アプローチ、そしてこの2つを組み合わせた包括的アプローチですが,ふれあいペアレントプログラムは、発達論的アプローチに依拠しています。  

ふれあいペアレントプログラムは、発達論的アプローチであるDIR/FloortimeプログラムやMore Than Wordsプログラムを参考にするとともに、現在の社会的認知発達及び社会的コミュニケーションに関する多くの研究知見を取り入れてプログラムを作成しました。  ふれあいペアレントプログラムは、このような様々なプログラムや先行研究を参考にして、日本の親子にとって使いやすいプログラムとして、尾崎(2018)がオリジナルに開発したものです。

4)ふれあいペアレントプログラムの効果検証と社会的普及

ふれあいペアレントプログラムは,子育て支援に関する調査研究と実践研究をもとに開発したものです。現在効果検証研究を進めていますが,平行して社会的普及を行っています。

図表3 ふれあいペアレントプログラムのRDDD